引き出しの奥から出てきたモバイルバッテリーが、パンパンに膨らんでいた——。「使うのをやめる」ところまでは、たいていの人が知っています。問題はその先です。
膨らんだモバイルバッテリーは、家電量販店の回収ボックスに入れられません。これは店が意地悪をしているわけではなく、回収の仕組みそのものが「膨張品を対象外」と定めているからです。しかも代わりの捨て方は、住んでいる自治体によって指示が正反対になります。
この記事では、JBRC(回収を運営している団体)の規定、5つの自治体の公式案内、NITE(製品評価技術基盤機構)の指示、そしてメーカー2社の回収規約という一次資料だけを使って、「結局どこへ持っていけばいいのか」を整理します。
先に結論:①回収ボックスは膨張品を受け取れない(JBRCの規定) ②自治体に電話するのが最短——市によって「そのままボックスへ」から「回収不可・持ち込んで相談」まで割れているため ③ポータブル電源は自治体では回収されないのでメーカー回収を使う。
※本記事は各自治体・団体・メーカーの2026年8月時点の公式案内に基づいています。自治体のルールは改定されるうえ市区町村ごとに異なるため、最終的にはお住まいの自治体の案内をご確認ください。
まず結論:状態と製品で行き先が変わる

| あなたの状況 | 持っていく先 |
|---|---|
| 膨らんでいない・破損なし | 家電量販店や自治体の回収ボックス(端子を絶縁して投入) |
| 膨らんでいる/変形・液漏れ・破損 | 回収ボックスは不可。自治体の清掃事務所・環境局へ電話して指示を仰ぐ(対応が市ごとに違う) |
| 熱を持っている | ボックスに入れず、自治体の処理施設へ直接持ち込み(さいたま市の例) |
| メーカー不明・無名ブランド | JBRCの対象外。自治体に相談するしかない |
| ポータブル電源 | 自治体では回収されない。メーカーの回収サービスへ |
以下、なぜこうなるのかを一次資料で追います。
なぜ回収ボックスは膨らんだバッテリーを断るのか
家電量販店や公共施設に置かれている充電池の回収ボックス。あれを運営しているのは一般社団法人JBRCです。そしてJBRCは、回収の条件を公式サイトで明確に定めています。
破損、水濡れや膨張等の異常のある電池や、外装なしのラミネートタイプの電池ではないこと
(JBRC「廃棄方法(回収対象/対象外説明)」)
膨張は、はっきりと対象外条件として書かれています。店員さんの判断ではなく、制度としてそう決まっている、ということです。
もうひとつの落とし穴:「メーカー不明品」も対象外
同じページには、見落とされがちな条件がもう1つあります。
JBRC会員企業製であること(会員企業外品やメーカー不明品は回収対象外)
つまりJBRCに加盟していないメーカーの製品や、どこ製か分からない製品も回収されません。ノーブランドの安価なモバイルバッテリーを買った人は、膨らんでいなくても正規の回収ルートから外れている可能性があります。
回収対象になるのは「ニカド電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池のいずれか」で、かつ電池の種類が明確であることが求められます。本体にLi-ionの表示とスリーアローマーク(3つの矢印のリサイクルマーク)があるかどうかが、実質的な入口の判定になります。
投入時の指示も明確です。
ショートの恐れがあります。金属端子部は絶縁テープで絶縁してください。
これは膨らんでいなくても必ずやるべき処理です。
【最重要】自治体によって指示が正反対になる
ここが本記事でいちばんお伝えしたい点です。「膨らんだモバイルバッテリーの捨て方」に全国共通の正解はありません。主要自治体の公式案内を並べると、こうなります。
| 自治体 | 膨張したモバイルバッテリーの扱い(公式案内) |
|---|---|
| 神戸市 | 「膨張・破損した充電式電池単体・モバイルバッテリーは、電池類回収ボックスでは回収できません」→ 区の環境局事業所へ相談のうえ持ち込み |
| さいたま市 | 「熱を帯びていない場合は、そのまま電池回収ボックス(取り外しができる場合)や小型家電回収ボックス(取り外せない場合)に入れてください」。熱を帯びている場合は市のごみ処理施設へ直接持ち込み |
| 福岡市 | 「膨張・液漏れ・破損があるものは、資源物回収ボックスのみで受け付けます」「小型電子機器回収ボックスや小型電子機器回収ペール缶には持ち込めません」。持ち込み時は「ボックススタッフにお声掛けください(施設窓口では対応しておりません)」 |
| 目黒区 | 「膨張や変形、液漏れなど破損したものは回収ボックスに入れず清掃リサイクル課または清掃事務所に直接お持ち込みください」 |
| 横浜市 | 膨張品の専用ページを設けているが、内容は「各区の資源循環局収集事務所へお問い合わせください」 |
神戸市は「ボックス不可」、さいたま市は「熱がなければボックスOK」。同じ状態のものに対して、正反対の指示です。
福岡市は「資源物回収ボックスなら可、ただしスタッフに声をかけて」という中間解。目黒区は「ボックス不可、事務所へ直接」。横浜市に至っては、専用ページを作ってまで「問い合わせてください」と案内している——それだけ問い合わせが多く、かつ個別判断が必要だということでしょう。
だから最短ルートは「自治体に電話」
ネット記事に書かれた一般論よりも、あなたの市のルールが唯一の正解です。「〇〇市 モバイルバッテリー 膨張」で検索するか、清掃事務所に電話する。これが遠回りに見えて最短です。
⚠️ なお事業で使ったものは産業廃棄物になり、自治体では回収できません(目黒区が明記)。会社のノートPCやモバイルバッテリーを自宅のごみに混ぜないでください。
家電量販店(ヤマダ電機・ケーズ・エディオン・ヨドバシ)はどうか
「ヤマダ電機に持っていけばいい」という情報をよく見かけます。これは膨らんでいなければ正しいです。
ただし、量販店の店頭ボックスの多くはJBRCの「協力店」として設置されているものです。つまり前述のJBRC規定——膨張・破損・水濡れは対象外、会員企業製でメーカーが明確なものに限る——がそのまま適用されます。店舗が独自にゆるい基準を持っているわけではありません。
したがって、
- 膨らんでいない普通のモバイルバッテリー → 量販店の回収ボックスでOK。端子の絶縁を忘れずに
- 膨らんだモバイルバッテリー → 持っていっても断られる可能性が高い。先に自治体へ
なお、回収ボックスの設置有無や運用は店舗ごとに差があります。往復の手間を考えると、行く前に店舗へ電話で確認するのが確実です。
捨てに行く前にやること(公的機関の指示)
処分先が決まるまで、家の中で保管することになります。ここでNITE(製品評価技術基盤機構)が具体的な指示を出しています。
モバイルバッテリーが膨らんでしまった際は、金属製の容器にふたをして密封してください
(NITE「モバイルバッテリー『5.異常発生時の対処』」)
ビニール袋や紙袋ではなく金属製の容器、しかもふたをして密封。万一発火したときに周囲へ燃え広がらせないための措置です。せんべいの缶や工具箱のような金属容器が現実的でしょう。
あわせて、次の3点も徹底してください。
- 端子を絶縁テープで塞ぐ(JBRCの指示。ショートによる発火防止)
- 可燃物から離す——寝具・カーテン・紙類のそばに置かない
- 穴を開けない・分解しない・力を加えない
そして絶対にやってはいけないのが、普通のごみ袋に入れることです。福岡市は「充電式電池は、火災の原因になりますので、ごみ袋で出さないでください」と明記しています。ごみ収集車やごみ処理施設での火災は、環境省の資料で年9,923件(2026年5月14日公表)と報告されており、宇都宮市では令和4年に処理施設が火災で処理能力の7割を失い、被害額は55億円にのぼりました。自分の1個が、他人の設備と作業員の安全を壊すという規模の話です。
💡 充電を使い切ってから出すのも有効とされています。充電状態が高いほど、衝撃を受けたときの発火が激しくなるためです。ただし膨らんでいるものを無理に使って放電させるのは論外なので、これは「まだ膨らんでいないが寿命で捨てる」場合の話として理解してください。
ポータブル電源は、自治体では回収されない
ここはキャンプ・車中泊をする人に直結する話です。福岡市は公式にこう案内しています。
災害時やアウトドア用のポータブル電源(ポータブル蓄電池)、車やバイク、船外機用のリチウムイオンバッテリーは、メーカーや販売店による回収を利用してください。
つまりポータブル電源は、モバイルバッテリーと同じ感覚では捨てられません。メーカーの回収サービスが事実上の唯一のルートになります。
そしてメーカーによって回収してくれる範囲がまるで違います。主要3社の公式規約を並べると、差は歴然です。
| Jackery | EcoFlow | Anker | |
|---|---|---|---|
| 対象製品 | 日本国内で販売されたポータブル電源本体のみ | ポータブル電源・エクストラバッテリー・ポータブルエアコン・モバイルバッテリー | モバイルバッテリー/ポータブル電源 |
| ソーラーパネル | 回収対象外(セット購入分も含まれない) | 記載なし | 記載なし |
| 故障・破損品 | 記載なし | 対象と明記 | 対象と明記 |
| 保証期間切れ | 記載なし | 対象と明記 | 対象と明記 |
| 中古・非正規購入品 | 記載なし | 対象と明記 | 対象と明記 |
| 付属品なしの本体のみ | — | 対象と明記 | 対象と明記 |
| 費用 | 無料(送料は自己負担) | 無償(送料は自己負担) | 送料は自己負担 |
| 着払い | 不可 | 不可(返送費用も自己負担) | 不可 |
| 持ち込み | — | — | 不可(郵送のみと明記) |
| 他社製品 | 不可 | 不可 | 不可 |
EcoFlowとAnkerは「故障・破損している製品」「中古で購入した製品」まで明示的に受け付けると書いています(EcoFlowのサービス開始は2023年7月18日)。一方でJackeryは本体のみが対象で、ソーラーパネルとアクセサリー類は対象外と明記されています。
⚠️ Ankerについては情報が割れているので注意してください。公式の回収サービスページは「弊社への持ち込みや着払いにてご送付いただいた場合、お受け取りができかねます」と郵送限定を明記しています。一方で、一部のAnker Storeで他社製品も含めた店頭回収の実証実験が行われていると報じられています。両者は別の取り組みと考えられるため、店舗へ持ち込む前提で動かず、行く前に必ず店舗へ確認してください。
⚠️ ソーラーパネルをセットで買った人は要注意です。「ポータブル電源とセットでご購入いただいたソーラーパネルにつきましても、回収対象には含まれません」とJackeryが明言しているため、パネルの処分先は別途探す必要があります。
なお3社とも回収そのものは無償だが、送料は自己負担・元払いのみという点は共通しています。数十kg級の大容量モデルだと送料もそれなりになるので、容量選びの段階から「最後にどう手放すか」も含めて考えておくと、後で困りません。メーカー選びの比較はJackery・EcoFlow・BLUETTI徹底比較にまとめています。
意外と対象が広い:あの充電式ギアも回収対象
見落としがちですが、充電池を内蔵した製品そのものも回収の対象です。目黒区は回収品目をこう列挙しています。
モバイルバッテリー、電子たばこ、加熱式たばこ、携帯型扇風機、電動シェーバー、電動歯ブラシ、コードレス掃除機等のバッテリー、電動式おもちゃなど
携帯型扇風機が名指しで入っている点に注目してください。キャンプ用品として買ったハンディファンや首掛け扇風機、充電式ランタン、充電式カイロ——これらは全部、燃えないごみではなく充電池の回収ルートに乗せるべきものです。
シーズンが終わって「もう使わないな」と思ったギアを、そのまま不燃ごみに出していないか。この機会に確認してみてください。
⚠️なかでもハンディファンは事情が少し違います。自治体によって「燃えないごみ」「不燃ごみ(別袋)」「電池を外せば燃やすごみ」と指示が正反対に割れているうえ、現在進行形で自主回収がかかっている製品もあります。詳しくはハンディファンの捨て方にまとめました。
そもそも膨らませないために
膨張は寿命のサインでもあり、扱いのまずさの結果でもあります。日常でできる予防は次の3点です。
- 高温下に置かない——真夏の車内・直射日光下は最悪の環境です。キャンプ道具として車に積みっぱなしにしない
- 満充電・完全放電のまま長期放置しない——長く使わないなら、半分程度の残量で涼しい場所へ
- 膨らむ前に寿命で入れ替える——一般に充放電500回前後が目安とされます。「まだ動くから」と使い続けるほど膨張のリスクは上がります
買い替えるなら「出口のあるメーカー」を選ぶ
本記事の結論からいえば、次に買うときの判断基準は容量や価格だけではありません。JBRCの回収対象は会員企業製に限られ、メーカー不明品は正規ルートから外れます。つまり「どこの製品か明確であること」自体が、処分のしやすさという実利になります。
大手ブランドのモバイルバッテリーであれば、リサイクルマークの表示も回収ルートも整っています。容量帯ごとの選び方はキャンプ用モバイルバッテリーの選び方にまとめています。
ポータブル電源についても同様で、前述のとおり無償の回収サービスを公表しているメーカーを選んでおくと、手放すときに困りません。
リチウムイオン電池の発火リスクそのものについては充電式カイロは危険?発火事故の実態で公的資料をもとに詳しく整理しています。
よくある質問(FAQ)
Q. 膨らんだモバイルバッテリーを普通ごみで出したらどうなりますか?
絶対に避けてください。収集車の中で圧縮されて発火し、車両火災やごみ処理施設の火災につながります。環境省の資料では廃棄由来の火災が年9,923件、宇都宮市では処理施設が処理能力の7割を失い被害額55億円という事例が報告されています。福岡市も「ごみ袋で出さないでください」と明記しています。
Q. ヤマダ電機に持っていけば引き取ってもらえますか?
膨らんでいなければ、多くの店舗で引き取ってもらえます。ただし店頭の回収ボックスはJBRCの協力店として設置されていることが多く、その場合は膨張・破損品は制度上の対象外です。また設置状況は店舗によって異なるため、行く前の電話確認をおすすめします。
Q. ノーブランドのモバイルバッテリーはどうすればいいですか?
JBRCの回収対象は「JBRC会員企業製であること(会員企業外品やメーカー不明品は回収対象外)」と定められているため、正規の回収ボックスには入れられません。この場合も自治体に相談するのが唯一の道です。安さだけで選ぶと処分の出口が無くなる、という点は購入時に意識しておく価値があります。
Q. 端子の絶縁は本当に必要ですか?
必要です。JBRCは「ショートの恐れがあります。金属端子部は絶縁テープで絶縁してください」と指示しています。回収ボックスの中で他の電池と接触してショートすれば、そこが発火点になります。セロハンテープやビニールテープで端子を塞ぐだけの作業なので、必ず行ってください。
Q. 少し膨らんでいるだけなら、まだ使えますか?
使えません。膨張は内部でガスが発生している状態で、元に戻ることはありません。「まだ充電できるから」と使い続けるのが最も危険です。使用を中止し、金属製の容器に入れて保管したうえで処分先を探してください。
Q. ポータブル電源を粗大ごみで出せますか?
多くの自治体で回収されません。福岡市は「メーカーや販売店による回収を利用してください」と明記しています。Jackery・EcoFlow・Ankerとも無料の回収サービスを用意していますが、送料は自己負担・着払い不可です。
Q. Ankerのモバイルバッテリーは店舗で回収してもらえますか?
公式の回収サービスは郵送のみです。Anker Japanの回収ページには「弊社への持ち込みや着払いにてご送付いただいた場合、お受け取りができかねます」と明記されています。ただし一部のAnker Storeで店頭回収の実証実験が報じられており、別の取り組みとして店頭回収が行われている可能性があります。持ち込みを予定するなら、必ず事前に店舗へ確認してください。なお回収対象はAnker製品に限られ、他社製品は受け付けていません。
Q. モバイルバッテリーとポータブル電源で、捨て方は違うのですか?
違います。モバイルバッテリーは自治体や量販店の回収ボックスが基本ルートですが、ポータブル電源は自治体では回収されないのが一般的で、メーカー回収が事実上の唯一の道になります。サイズと容量が桁違いなので、同じ枠組みでは扱えないためです。
まとめ:膨らんだら「ボックス」ではなく「電話」
- 回収ボックスは膨張品を制度上受け取れない——JBRCが「破損、水濡れや膨張等の異常のある電池…ではないこと」を条件として明記
- 自治体によって指示が正反対——神戸市は「ボックス不可」、さいたま市は「熱がなければボックスOK」、福岡市は「資源物回収ボックスのみ・スタッフに声かけ」、目黒区は「事務所へ直接」、横浜市は「問い合わせて」
- だから最短は自治体への電話。ネットの一般論より、あなたの市の案内が唯一の正解
- 処分先が決まるまでは金属製の容器にふたをして密封(NITE)+端子を絶縁+可燃物から離す
- メーカー不明品はJBRCの対象外——安さだけで選ぶと出口が無くなる
- ポータブル電源は自治体では回収されない。EcoFlowは故障・破損・中古も受け付ける一方、Jackeryは本体のみでソーラーパネルは対象外
- 携帯型扇風機・ランタン・カイロなど充電池入りのキャンプギアも、不燃ごみではなく充電池の回収ルートへ——骨伝導イヤホンやスマートウォッチのように電池が本体から外せない製品は、電池単体ではなく小型家電の回収ルートになる点にも注意
ガジェットを増やすということは、いつか手放す責任も増やすということです。買うときに「この製品はどこが引き取ってくれるのか」まで見ておくと、引き出しの奥で膨らんだ塊と対面する日が来ても慌てずに済みます。
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